多くの植物は、いろいろな目的で「油」をつくります。 植物のつくる「油」にはどのようなものがあるのでしょうか。

「油脂」と「精油」
植物がつくる油とはいっても、「油脂」と「精油」とでは、成分もつくる目的も全く異なります。
「油脂」とは、グリセリンに脂肪酸が3分子結合したトリグリセライドといわれる物質であり、エネルギー源としてつくられるものです。 純粋な油脂はにおいはほとんどなく、私たちが食用にしているサラダ油や天ぷら油はこの「油脂」になります。
また、動物も「油脂」に相当するものを持っていますが、これは一般に固体で「脂肪」と呼ばれます。 油脂のエネルギー量は種類に関係なく、100gあたり900kcalです。
「精油」(エッセンシャルオイル)の働きはいろいろあるといわれています。 そのひとつは、植物自身にとって不利な生物である昆虫や病原菌などから身を守るためにつくり出す、いわば「武器」のような働きです。 精油には特有のにおいがあり、液体の成分だけではなく、ハッカ脳(メントール)や樟脳(カンフル)のように、固体成分を含むものもあります。 精油は、私たちの生活にも役立つものが多く、例えば害虫に対する忌避効果や殺虫効果、カビや細菌の増殖を抑制する効果があり、私たちは古くからこのような性質をうまく生活の知恵として取り入れています。
精油の採取方法について
このような植物精油(エッセンシャルオイル)の採取方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
水蒸気蒸留法
最も一般的な方法は、原料の植物を高温の水蒸気にさらし、にじみ出る精油を上澄みとして集める水蒸気蒸留法です。 精油は多くの場合水に浮くため、上部に浮いた油を精油として回収します。
簡単な装置で製造でき、得られる精油も高品質のものが得られるのが特長です。
圧搾法
原料に物理的圧力をかけたときににじみ出る精油を集める方法です。 精油の含有量が多く、原料が多肉質の柑橘類の果皮に利用されます。
オレンジやハッサクの皮をむくときに、手が油でベタベタになったという方は多いでしょう。 この規模を大きくし、精油を大量に採取できるようにしたのが圧搾法です。
溶剤抽出法
高価な原料や精油の含有量が少ないものについては、溶剤抽出法が用いられます。
これは、原料をエタノールやヘキサン、アセトンなどの溶剤で抽出し、溶剤を除去して濃縮することにより、高濃度の抽出物として得る方法です。
バラの花やバニラは専らこの方法が利用されます。 この方法はコストがかかるだけではなく、溶剤による品質低下の可能性があるので、他の方法での採取が困難な場合に、この方法が用いられます。
最近では溶剤抽出法の欠点を改善する方法として、超臨界流体(二酸化炭素)抽出法が開発されていますが、まだ一般的ではありません。

抽出方法 利用されている植物(ハーブ)の例
水蒸気蒸留法ハッカ、レモングラス、クスノキ、ラベンダー、ユーカリ、シソ、シナモン(桂皮)、
クローブ(丁子)などほとんどの植物精油
圧搾法柑橘類の果皮(レモン、ベルガモットなど)
溶剤抽出法バニラ果実、バラ(ローズ)、ジャスミン、ベンゾイン(安息香)など