なぜ植物由来の天然物で「虫を退治」したり「虫を防いだり」できるの?
植物といえば、花が咲くと虫が寄ってきますよね。
そうなのです。花は受粉するために虫の好きな匂いを発散して虫を誘引するのです。
そして蜜を吸わせるなどして受粉するのです。
しかし、そのような植物でも、虫に茎や葉をかじられるのはいやなのです。
また、植物に付く虫の幼虫のなかには、葉をものすごい勢いで食べるものもいます。だから、このような虫に卵を産みつけられるのはとても困ったことなのです。
植物は、動物のように自分の意思で移動することはできません。
そこで、植物は長い進化の過程で、虫の嫌がる匂いで虫を防ぐ術を身に付けたのです。
このような虫の嫌がる匂いの物質をうまく利用して、虫を退治したり、虫を防いだり、産みつけた卵を殺したりすることができたのです。
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天然物情報
ハッカ(薄荷)ってなに?
このような漢字なのです。
日本では和種薄荷(右上の写真)という植物が北海道の北見地方では現在も栽培されています。
「北海道のお土産としても売っていますね。 」
「ビンに入った油で売っていますね。 でも棒状の塊(結晶)もハッカって書いて売っていますね。 これはどういうこと?」
「どちらが本物なのでしょうか?」
これは、和種薄荷の葉や茎を陰干ししてから熱い水蒸気にさらしてやると、植物からしみ出してくる精油が採れます。
この精油を冷やすと、その中に針状の塊(結晶)が出てきます。
そうです。 その塊(結晶)を売っているのです。これは正式な名前ではメントールまたは薄荷脳(右下の写真)といいます。
この塊を取ったあとに残る油も売られています。この油はハッカ油といいます。
ハッカという言い方は植物のことを言ったり、この塊のことを言ったり、油のことを言ったり、ちょっとあいまいな言い方なのです。
人によって好みがありますが、すっきりした爽快な香りと冷感はガムやキャンディなど、私たちの身近な生活の中ですっかりおなじみになっています。
弊社では創業以来、害虫獣防除を目的としたハッカの利用技術について研究しています。 ダニ退治用の「ダニフリー」(防除用医薬部外品)をはじめとして、ネズミ忌避用の「マウスビーズ」(業務用)といった、これまでにない自然派商品を開発しています。 安心して頼れるハッカのパワーをぜひ弊社製品で実感してください。 関連の商品案内 ダニフリー(防除用医薬部外品) マウスビーズ 天然ハッカオイル 天然クリスタルハッカ脳 |
シソ油は、青紫蘇(別名:大葉)の葉を高温の蒸気にさらすことにより採取される精油です。
このシソ油の香りの主成分はペリラアルデヒドで、40%〜50%程度含まれています。
青じその葉はビタミンやミネラルの豊富な食品です。また、コレステロール値を低下させる作用や血糖値を下げる作用があるともいわれています。食べ方、料理の方法などは、たくさんのホームページで紹介されています。
(一般に食用として販売されている「しそ油」とは、多くの場合、別種のシソ科植物であるエゴマ(荏胡麻)の種子から採れる油脂のことを指します。エゴマ種子油は、不飽和脂肪酸を豊富に含み、高級食用油脂として親しまれています。)
弊社では、このシソ(葉)油の害虫に対する殺虫活性を利用して、米びつ用の防虫剤として販売しています。 お米はにおいを吸着しやすい性質を持っていますが、シソの香りですと、お米とのにおいの相性もよいので、あまり気にすることなくご使用いただけます。 関連の商品案内 天然ハーブ お米のお守り |
多くの植物は、いろいろな目的で「油」をつくります。 植物のつくる「油」にはどのようなものがあるのでしょうか。
「油脂」と「精油」
植物がつくる油とはいっても、「油脂」と「精油」とでは、成分もつくる目的も全く異なります。
「油脂」とは、グリセリンに脂肪酸が3分子結合したトリグリセライドといわれる物質であり、エネルギー源としてつくられるものです。 純粋な油脂はにおいはほとんどなく、私たちが食用にしているサラダ油や天ぷら油はこの「油脂」になります。
また、動物も「油脂」に相当するものを持っていますが、これは一般に固体で「脂肪」と呼ばれます。 油脂のエネルギー量は種類に関係なく、100gあたり900kcalです。
「精油」(エッセンシャルオイル)の働きはいろいろあるといわれています。 そのひとつは、植物自身にとって不利な生物である昆虫や病原菌などから身を守るためにつくり出す、いわば「武器」のような働きです。 精油には特有のにおいがあり、液体の成分だけではなく、ハッカ脳(メントール)や樟脳(カンフル)のように、固体成分を含むものもあります。 精油は、私たちの生活にも役立つものが多く、例えば害虫に対する忌避効果や殺虫効果、カビや細菌の増殖を抑制する効果があり、私たちは古くからこのような性質をうまく生活の知恵として取り入れています。
精油の採取方法について
このような植物精油(エッセンシャルオイル)の採取方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
水蒸気蒸留法
最も一般的な方法は、原料の植物を高温の水蒸気にさらし、にじみ出る精油を上澄みとして集める水蒸気蒸留法です。 精油は多くの場合水に浮くため、上部に浮いた油を精油として回収します。
簡単な装置で製造でき、得られる精油も高品質のものが得られるのが特長です。
圧搾法
原料に物理的圧力をかけたときににじみ出る精油を集める方法です。 精油の含有量が多く、原料が多肉質の柑橘類の果皮に利用されます。
オレンジやハッサクの皮をむくときに、手が油でベタベタになったという方は多いでしょう。 この規模を大きくし、精油を大量に採取できるようにしたのが圧搾法です。
溶剤抽出法
高価な原料や精油の含有量が少ないものについては、溶剤抽出法が用いられます。
これは、原料をエタノールやヘキサン、アセトンなどの溶剤で抽出し、溶剤を除去して濃縮することにより、高濃度の抽出物として得る方法です。
バラの花やバニラは専らこの方法が利用されます。 この方法はコストがかかるだけではなく、溶剤による品質低下の可能性があるので、他の方法での採取が困難な場合に、この方法が用いられます。
最近では溶剤抽出法の欠点を改善する方法として、超臨界流体(二酸化炭素)抽出法が開発されていますが、まだ一般的ではありません。
抽出方法 | 利用されている植物(ハーブ)の例 |
水蒸気蒸留法 | ハッカ、レモングラス、クスノキ、ラベンダー、ユーカリ、シソ、シナモン(桂皮)、 クローブ(丁子)などほとんどの植物精油 |
圧搾法 | 柑橘類の果皮(レモン、ベルガモットなど) |
溶剤抽出法 | バニラ果実、バラ(ローズ)、ジャスミン、ベンゾイン(安息香)など |
このコーナーでは、知っておくと役立つ天然物の情報をお届けします。